東京地方裁判所 昭和28年(ワ)9908号 判決
「原告は被告が右催告期間内に右供託書の引渡をしなかつたから右賃貸契約は解除された旨主張するので考えてみると、仮に被告が前記催告に応じて賃料供託の供託書の引渡をしなかつたとしてもその結果として原告が供託の目的物たる賃料の還付を受けるのに供託物取扱規則第十条所定の手続を経る必要を生じ場合によつて損害賠償の問題が起り得るにすぎずそれ自体では賃貸借契約に基く賃借人の義務不履行とはなり得ないからこれを理由として契約解除をなし得る筋合はない。もつとも原告は右供託の成立要件を争い供託にかかる賃料についてはなんら履行の提供がなかつた旨主張するが右債務の不履行を理由に賃貸借契約の解除をなすにはこれに先立ち右賃料の支払を催告することを要するところ賃料供託の供託書の引渡を催告したのではかえつて右賃料につき供託原因が存在したこと進んでは債務不履行がなかつたことを容認する意思を表明したものと解される虞があるから右賃料の不払を理由とする契約解除の要件たる催告としては不適法である。従つていづれにしても右催告を前提とする前記契約解除の意思表示はなんらその効力がないものと謂う外なくこの点の原告の主張はその余の判断をなすまでもなく失当たるを免れない」